ダイバッチョの日記

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112歳の魚を発見、淡水魚の長寿記録を更新!

2019年8月6日 20:59ナショナル ジオグラフィック日本版
 寿命が100年を超え、大概の人間より長生きするであろう動物のリストに、吸盤状の口を持つ大型の魚が加わった。

 放射性炭素年代測定法を利用した最新の研究で、なんと112歳のビッグマウスバッファロー(Ictiobus cyprinellus)がいたことが判明した。論文は5月29日付けで学術誌「Communications Biology」に発表された。これまで知られていたこの種の最高年齢は26歳なので、一気に4倍以上も記録を更新したことになる。

 ビッグマウスバッファローは北米原産の淡水魚で、主に米国北部とカナダ南部に生息、大きいものは体重35キログラム近くになることもある。約1万2000種いる硬骨淡水魚の中で、年齢が確認された最高齢の魚になった。

「100歳を超える魚? それは大変なことです」と言うのは、米ルイジアナ州にあるニコールズ州立大学の助教授、ソロモン・デイビッド氏だ。氏は今回の研究には参加していない。

 近年、年代測定技術の進歩により、多くの種の魚がこれまで考えられていたより長生きであることが判明している。例えば、北大西洋に生息する大型のサメ、ニシオンデンザメは270年以上も生きられる。魚の生態を考える上で年齢は基本的な要素だ。しかし、いまだにほとんどの種の魚で寿命はわかっていない。

耳石と放射性炭素で年齢を推定

 論文の著者らには、年代測定を始める前から、ビッグマウスバッファローは考えられているより長生きではないかとの予感があった。

 研究チームは、主にボウフィッシング(弓を使う魚釣り)で釣られた386匹のビッグマウスバッファローから耳石を取り出し、薄くスライスした。耳石は炭酸カルシウムでできた薄い板状の小さな組織で、体の平衡感覚を保つ働きがある。耳石には木の年輪に相当する「輪紋」という層が形成される。研究者らは顕微鏡を使って、耳石に見られる輪紋を数え、魚の年齢を推定した。すると、この魚の寿命は80年から90年以上にもなるという結果が出た。

 研究のリーダーであるアレック・ラックマン氏が初めてこの数字を見たときのリアクションは、「そんなはずはない!」だった。

 この意外な推定年齢を検証するため、米ノースダコタ州立大学の大学院生であるラックマン氏と同僚は、核実験の影響を利用した放射性炭素年代測定法を用いることにした。これは、耳石のように時間を刻む組織に含まれる放射性同位体炭素14」の量を、20世紀中頃の核実験で大気中に放出された炭素14の濃度と比較することによって動物の年齢を測定する方法であり、人間の遺体からサメまであらゆるものの年齢測定に使用されている。

 放射性炭素年代測定法による結果は、耳石の輪紋を数えて推定した年齢と一致し、この魚の推定寿命が80歳から90歳であることが確かめられた。

 100歳を超えるビッグマウスバッファローが全部で5匹いたが、112歳という最高齢記録を打ち立てたのは、米ミネソタ州ペリカンラピッズの近くで捕らえられた重さ約10キログラムのメスだった。「成熟した個体としては、かなり小さいほうです」とラックマン氏は話す。

ビッグマウスバッファロー少子高齢化

 ラックマン氏が最初に年齢を測った16匹はすべて80歳を超えており、これは別の意味でも驚くべき発見だった。つまり、この魚の多くが1939年より前に生まれた個体であり、何十年もの間、子どもが生まれていないことになる。原因はダム建設ではないかと考えられる。ダムができると、上流の産卵場所への遡上が困難に、あるいは完全に不可能になってしまう。

 実は、ビッグマウスバッファローは「雑魚(trash fish)」と呼ばれることも多い。通常は食用にされず、また米国では外来種となるコイなどと混同されているからだ。しかし、ラックマン氏は「そのような言葉は使うべきではありません」と主張する。「非常に多くの在来種を中傷するものだからです」

 デイビッド氏も、この言葉は「この生物本来の価値をおとしめるものです」と言う。というのもビッグマウスバッファローは、外来種のコイを追い払い、川の健全性を保つという重要な役割を果たしているからだ。

 長い間釣りの対象としては人気のなかったビッグマウスバッファローだが、最近はボウフィッシングの獲物にされることが増えている。ボウフィッシングは糸をくくりつけた矢を弓で射って魚を捕る方法で、夜間にスポットライトを使って行われることが多い。

 ビッグマウスバッファローがいる米国の州で、この魚をスポーツや商業目的で釣ることを制限しているところはほとんどない。米国では絶滅の危機に瀕しているとは考えられていない魚だが、カナダでは保護に対する関心が高まっている。ラックマン氏もデイビッド氏も、ビッグマウスバッファローが驚くほど長生きであるとわかったことで、この魚への評価が上がることを期待している。

 デイビッド氏は言う。「今回の素晴らしい事実の発見により、この種がもっと注目されることを望んでいます」

文=Sean Landsman/訳=山内百合子

写真の説明:米サウスダコタ州のギャビンズポイント国立魚類孵化養殖場・水族館で撮影されたビッグマウスバッファロー(Ictiobus cyprinellus)。放射性炭素年代測定法により、この種は知られている中で最長寿命の淡水魚であることが確認された。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)



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